リーフの音響特性を測定した結果広帯域で平坦な周波数特性、低歪率が得られていることがわかった。また、ウォーターフォールやスペクトログラムも示している。
(The latest update: 2023年1月25日)
(The first upload : 2019年11月27日)
EVはガソリンエンジンを搭載していないので、静止時は無音、走行時でも僅かなモータの回転音とロードノイズがあるのみで快適なオーディオ再生環境を提供する。この環境での音響特性は興味深い。ここでは、リーフの標準オーディオ装置を用いた場合(オプションのボーズやスピーカ交換なし)の音圧周波数特性、歪率特性を測定する。特に今回、運転席のみでなく助手席、後部席での特性も測定した。
測定方法
室内音響測定においては、通常、TrueRTAもしくはREWを用い簡便な測定ではDSP Mobile Analyzerを用いている。最低周波数まで正確なレスポンスを測定するには、TrueRTAのQuick Sweepもしくは、REWを用いることが必要である。TrueRTAのQuick SweepとREWは別稿(音響測定ツールREW,TrueRTA,Analyzerの比較)で示しているようによく一致している。本稿ではREWを主として用いた。また、DSP Mobile Analyzerとの比較は本稿の補足に示している。
- ハードウエア: PC, iPhone 13 Pro, iPad Pro
- ソフトウエア: REW (Room EQ Wizard), DSP Mobile Analyzer
運転席での特性を測定する場合の測定ブロック図を示す。REWの場合PCの信号をリーフのAUXに加えスピーカからの再生音をマイク(ECM8000)、EMU-0404経由でPCのUSB端子に加える。DSP Mobile Analyzerの場合にはiPhoneから正弦波スイープ信号(90秒/20Hz~20kHz)を発生させBlueTooth経由でリーフに加える。尚、助手席、後部席での測定ではマイク位置を各々の席に移動設置する。
測定ブロック図
車内音響特性
運転席での音圧周波数特性及び歪特性
REWで実測したリーフの運転席における再生音の音圧周波数特性及び歪特性を示す。下図において、横軸は周波数、縦軸は音圧(SPL: Sound Pressure Level)である。車内という特殊条件にも関わらず、再生音については、50Hz~20kHzの範囲で広帯域で平坦な特性が得られている。また、歪も100Hz以上の帯域において1%以下という結果が得られている。尚、本測定においてSPLの数値は厳密でなく目安である。
助手席での周波数特性及び歪特性
次に助手席側での周波数特性及び歪特性を示す。下図において、横軸は周波数、縦軸は音圧(SPL: Sound Pressure Level)である。下図のように運転席と比較して遜色ない特性が得られている。
後部席での周波数特性及び歪特性
後部席(中央)での周波数特性及び歪率を示す。下図において、横軸は周波数、縦軸は音圧(SPL: Sound Pressure Level)である。後部席は音響的には運転席と比較して不利な条件であるが、周波数特性が高域で低下すること、帯域中央付近にディップがみられることを除けば実用的な特性と言える。
運転席でのウォータフォール特性
次の図はウォータフォールによる3D表現で音圧の減衰時間が長いのは150Hz以下であることがわかる。
運転席でのスペクトログラム
スペクトログラムを次に示す。60Hz付近の音圧は最大70dBから時間の経過に従って上方向に緩やかに減衰していくことがわかる。
補足1: REWとDSP Mobile Analyzerとの比較
音圧周波数特性のみの測定であれば本稿で用いたREWの代わりにDSP Mobile Analyzerを用いることができる。REWとDSP Mobile Analyzerによる測定結果の比較を次に示す。150Hz以上の周波数帯域では両者は比較的よく一致している。150Hz以下ではAnalyzerのレベルはREWに比べて数dB低下するので、このことに注意すればAnalyzerを用いてもよい。