ビデオ通話-Zoom、Discord、Skypeの画質を測定して比較した結果、動画のスムーズさの点でZoomが1番優れていた(2021年4月に測定)。
(The latest update: 2024年9月19日)
(The first upload: 2021年4月14日)
Zoom、Discord、Skypeについては数多くの評論があるがその画質について実測されたことはほとんどない。また、それらの画質は、使用する伝送路によって自動調節されることもあるので同一の実環境下で測定した上で比較することが重要である。
Zoom、Discord、Skypeは、各々本来の使用目的が多少異なり、Zoomはビデオ会議システム、Dicordは当初ゲーマー用で現在多機能コミュニケーションツール、Skypeは当初P2P用で現在ではチャット、会議に使用可能な多機能ツールであるがいずれもP2P通話が可能となっている。ここでは、P2Pのビデオ通話システムとして各々の無料版の画質、音質をテストした。一方のPeerとしてiPhone(iPad)を使用したのは撮影の容易さのためであり、他方のPeerとしてパソコン(Windows)を使用したのは記録データ処理の利便性のためである。
重要なポイント
- ビデオに関して動きがスムーズであってフレーム抜けがないこと
- オーディオに関しては、明瞭度とともに音声が途切れないこと
- エコーの発生がないこと
対象物(被写体)
フレームレートが低いとあまり動きの激しい対象物(被写体)は条件として厳しすぎるので、手元にあった動きながら音声を発するロボットを採用した。このロボットは歩きながら歌(よく知られた“If you’re happy and you know it”で言葉の明瞭度の確認に最適)を歌いナレーションも入る。
測定方法
iPhone(またはiPad)の録画機能を用いて上記対象物を録画再生した基準ビデオとiPhone(またはiPad)にインストールしたZoom、Discord、Skypeで録画して送信した信号を受信側のパソコン(以下PCと略す)で再生したビデオとを比較する。画像サイズは360x640とするため、iPhone録画を1080p60(画像サイズ1080x1920,60fps)からダウンコンバートして画像サイズ360x640とする。概念的なブロック図を下に示す。Room 1のiPhone(またはiPad)で撮影された信号は、WiFi Router、FTTH経由でServerに送られ、Room 2にあるPCで受信して録画する。また、測定ではエコーが発生しないように留意した。
Zoom
Zoomは、2011年創設のZoomビデオコミュニケーションズ(米国サンノゼ)が提供するクラウドコンピューティングを使用したウェブ会議サービス。 Zoomサービス内にミーティングルームを開設し、ミーティングIDやパスワードを共有するユーザー同士で多地点と同時にウェブ会議を行うことができるが、P2P用としても使用することができる。今回、P2P(iPhone-PC)としてテストした。サーバ設置場所の問題でニュースになったこともある。
iPhone録画
基準としてiPhoneによる録画再生の動画を示す(再生にはプレイボタンを押す)。
Zoom録画の動画
Zoom録画再生ではビデオ解像度及び動きのスムーズさがiPhone録画再生に比べてわずかに劣るものの実用上あまり問題になるレベルではない。また、音はiPhone録画再生に比べて若干高域に偏るものの途切れることはなくエコーもほとんど感じられない(再生にはプレイボタンを押す)。
Zoom録画でのオーディオ周波数特性
Zoom録画でのオーディオ周波数特性(iPhone録画を基準とする相対的な周波数特性)を、上記iPhoneでの録画とZoomでの録画のオーディオ信号のピークスペクトラムの差分をとることにより求めた。その結果を次のグラフに示す。横軸は周波数、縦軸は相対的なレベル(dB)である。差分をとっているので多少の凹凸はあるものの全体的な傾向を把握することができる。図のようにZoom録画の場合、iPhone録画に比べて400Hz以下と6kHz以上が下降している。本測定結果は上記聴感とも傾向が一致する。このことから、Zoom録画では人の声の明瞭度を重視したオーディオ通過帯域となっているいることがわかる。
Discord
2015年に米国で開発されたシステムでリリース後ゲーマーによって普及していった。その後ゲーマーだけでなく、テレワークにおけるビデオ会議システムあらゆるコミュニティが使えるコミュニケーションツールとなっている。コミュニティ毎にサーバを設定してチャットは2人または複数人のグループでのダイレクトメッセージ や招待されたユーザーが参加することができる。今回P2P(iPad-PC間)のビデオ通話としてテストした。
iPad録画
基準としてiPad録画再生を示す(再生にはプレイボタンを押す)。
Discordの場合に受信側PCで録画した動画を次に示す。ロボットの動きを見ると特にスライドしながら前後に移動する場合の動きがスムーズではなくコマ落ちのように見える。このことは受信側PCのCPU負荷を低減するために録画しない場合でも目視で観察された。
Skype
Skypeは、2003年当初はP2Pを目的として開発された(SkypeはSky peer-to-peerの略)。現在はマイクロソフト社が提供するクラウドベースのシステムを利用したクロスプラットフォーム対応のコミュニケーションソフトウェア(ビデオ通話、最大100名までのグループビデオ会議等)となっている。今回、P2P(iPhone-PC)としてテストした。
Skype動画
Skype動画を受信側PCで録画した動画を次に示す。ロボットの動きを見ると特にスライドしながら前後に移動する場合の動きがスムーズではなくコマ落ちのように見える。目視でも同様だった。
今後
各システムの今後の進歩(ビデオの静的/動的解像度、音質、利便性)とともにシステムの安全性(サーバ設置場所、データ管理等)が注目される。